宝財探偵所の迷宮事件

宝財探偵所が未解決事件に挑みます。

宝財探偵所の迷宮事件 ⑮-1    坂本弁護士一家殺人事件

●事件名
坂本弁護士一家殺人事件

●事件の概要
1989年11月4日、神奈川県横浜市の洋光台に住む坂本堤さん(33)と妻、息子の一家3人が殺害された事件。

●事件の背景
 坂本弁護士の所属するY法律事務所は、事件当時、国労横浜事件共産党員宅盗聴事件などで、県警と対立していた。
そのため、一家が失踪した当初県警は「(坂本は)大きな借金を抱えて逃げた」「仕事で大金が入りそのままもって逃げた」などと言ってあまり捜査しなかったらしい。
 犯行現場に落ちていたプルシャというオウム真理教のバッチにより、オウム信者の犯行であることがわかった。後に、オウム真理教幹部の上佑氏がプルシャを大量発行していたことがわかっている。いつ頃のプルシャであるかなどの情報をかく乱するためであると思われる。

●犯人は誰か
 坂本弁護士が属していたY法律事務所は、当時、共産党宅盗聴事件などを担当していた。この事件は、共産党側が国に勝訴し賠償金を得ている。
 神奈川県警が坂本事件の際に説明した「(坂本氏が)大金を持ったままどこかへ逃げた」という言葉が気になる。借金をしていたことと、大金を持って逃げたことは正反対である。つまり、事件直後に坂本弁護士が殺害されていて、被害者と加害者がその時点でごっちゃになっていたことが考えられる。
 これは、つまり、犯人のことである。
 犯人は、借金を抱えていた男で、坂本氏の「大金」を持って遺体を埋め逃走していたのだ。
 つまり、犯人は金に困っていたオウム信者である。

 坂本氏が所属していたY法律事務所は、共産党宅盗聴事件の裁判に勝訴している。共産党が国を相手取る裁判にしてはめずらしいことなのではないだろうか。
 共産党党員宅盗聴事件というのは、共産党のある党員の自宅に盗聴器が仕掛けられ、共産党が国を相手取り裁判を起こしていた(電話の雑音が多い場合は、盗聴の可能性を疑ってみる必要がある)。


 犯人は、巧妙である。
 坂本弁護士をもし殺害しても、共産党の弁護を引き受けているY法律事務所のために、捜査はあまりしないだろう、と踏んでいた。
 しかも、その内部情報を知っているオウム信者の警察官が神奈川県警にいたとしても、おかしくない。
 
 坂本氏が持っていたと思われる大金は、数千万円にのぼる。
 その出所が、真犯人ではなかろうか。
 そして、その犯人のもう一つの目的は、共産党事件で勝訴したY法律事務所に災難をもたらすことだったのではないだろうか。
 共産党事件で原告側が勝訴しそうだったので、犯人がおもしろくなかった。つまり、Y法律事務所に横槍を入れる目的ではなかったか、ということだ。

 つまり、Y法律事務所は、共産党の事件では勝訴したが、坂本弁護士の事件では打撃を被った。坂本弁護士に入った大金の正体は、これであったのではないだろうか。共産党の事件で勝訴しそうだったY法律事務所に災いことがあればいいと、坂本弁護士を殺害することを企んだが、坂本弁護士には「お前をやるぞ」と金を渡した。それが数千万円の正体である。
 ある時、勝訴の賠償金が坂本弁護士に支払われた。しかし、オウム信者坂本弁護士を殺させた。そして金を持ち逃げした。
 共産党の盗聴事件の黒幕は、I知事だった。勝訴されたことに腹が立ち、Y法律事務所の誰かを殺さずにはいられなかった。


 もう一つの見方には、共産党のある党員が勝訴する代わりに、坂本一家を殺すという密約のようなものが結ばれていた、ということだ。
 坂本氏に払われた数千万円は、坂本氏の「殺され代」だったが、それを使う間もなく犯人に持ち逃げされた。

 金を払った人物はもともとその金をオウム信者にくれるつもりで坂本弁護士に渡している。坂本事件は金を払うトンネル会社ならぬトンネル事件というわけだ。オウムに渡す金は、ダーティーなもので、おそらく麻薬の代金のようなものである。
 麻薬を密売する者は、一番上の者から数千万円もらえる。密売人から慕われるし、支配できるようになるからである。そうすると、麻薬をくれるトップの人は、金がもらえる上に麻薬ももらえて崇拝される。

 オウム信者の中に、二ノ宮という者がいる。神奈川県横浜市洋光台に住んでいた。坂本弁護士の自宅の近くである。
 いつ頃住んでいたかはわからないが、事件が未解決になっているのを知って近くに住んでいたことも考えられる。
 坂本弁護士一家の自宅が洋光台で、洋光台に住むオウム信者がいたことは、偶然とはいいがたい。何らかの関連性があると考えた方が自然ではないだろうか。

 犯人は、坂本弁護士の持っている大金を狙った。
 オウムと坂本氏の関わりは、出家した信者の母親が坂本弁護士に相談にきたことから始まり、オウム問題に取り組むようになったという。当時選挙に出ようと思っていた麻原彰晃の恨みを買っていた。だから、坂本氏の様子をいつも探っていたと思われる。